政府・与党は10日、財政支出15兆4000億円、事業規模56兆8000億円と、いずれも過去最大となる「経済危機対策」を決定した。「今回の危機は戦後最大。国民の総力をあげた挑戦が必要だ」というのが記者会見で発表した麻生総理大臣の認識(4/10/NIKKEI NET)。
確かに戦後最大の危機という経済指標がある。日銀が1日に発表した短観・企業短期経済観測調査がその一つ。それによると「景気の現状について、『良い』と答えた企業から『悪い』と答えた企業を差し引いた割合は、大企業の製造業でマイナス58ポイントと、石油危機の影響に見舞われた昭和50年5月のマイナス57ポイントを下回って、昭和49年に日銀が調査を始めて以来、最も悪い値」。「前回、去年12月からの悪化幅も34ポイントと過去最大」。「とりわけ自動車がマイナス92ポイントに落ち込む」(4/1/12:13/NHK HP)などまさに深刻な状況。
たしかにそういう経済指標はあるのだが、それで日本の国全体が深刻な状態に陥っているわけではない。たとえば「マイナス92ポイント」という数値が出た自動車業界のトップのトヨタ、相変わらずの株主配当をしている。「08年9月の中間配当は前年と同額の1株あたり65円」。09年3月期は不況を反映して減配するようだが、かりに「前年と同じ75円を維持すると年間配当は140円で、配当総額は4000億円超となる」(4/1/ 読売新聞=Google)。
一方トヨタ社員の方はどうか。今年の春闘で4000円のベースアップは通らなかったが、それでも定期昇給分は確保。その額7100円。定期昇給だけで7,100円だ。一方年間のボーナス、「去年の妥結額を67万円下回る」とはいえ年間で「186万円とする」との回答があったそうだ(3/17/18:18/NHK HP) 。
確か年収で200万円を下回るとワーキングプアと言うんじゃなかったっけ。トヨタの社員は去年の実績でいえばボーナスだけで年収253万円(平均)の収入を得ている。
確かにボーナスで67万円減るというのは痛いだろう。そういう生活水準で暮らしてきたのだからどこかで生活水準を落とさなければいけない。しかし暮らせないというわけではない。
そういうことだから「100年に1度の金融危機・経済危機」といわれている割には世間のニュースはそれほど変わっていない。
今年のゴールデンウィーク、円高の影響もあるようだが、曜日の並びがいいため去年より海外旅行が増える見通しだそうだ。
休日の高速道路1.000円で遠出をしてみたいという人が増えているそうだ。
民間調査会社の調査によると定額給付金の使い道で一番多いのが「外食」の28%。3位の「旅行」(21.7%)と合計すると約50%になる。これに対して2位の「普段の生活費の補てん」は22.1%となっている(4/10/NIKKEI NET)。
こうしてみると「100年に1度の金融危機・経済危機」で影響を受けながらもそれなりの生活を続けている人たちは結構いるのだ。
ではどこが影響を受けているのだろう。仕事をしたくても思うようにできない人たちだろう。障害者、高齢者、そして投資家への配当を維持するために、社員へのボーナスを維持するために切られた非正規労働の人たち。さらには仕事量がガクンと減った下請けの中小企業で働く人たち。
そうした中で過去最大となる政府の「経済危機対策」だ。全文を読んだわけではないが環境基準を満たした新車を購入する場合とか古い車を買い換えた場合に補助金がでるそうだ。
極端な落ち込みを見せている自動車業界のてこ入れということだろう。前述のようにこのご時世でもおカネを使おうと思っている人たちはたくさんいるからこれで自動車業界が活況を取り戻すかもしれない。しかしその結果はどうなる。投資家への配当は増えるだろう。社員へのボーナスも増えるだろう。切られた非正規労働者も戻れるかもしれない。しかし戻れるだけではないか。今の仕組みをそのままにして景気を戻しても危機を招いた社会に戻るだけだ。
そしてその後には財政危機。景気後退の中での「経済危機対策」で税収よりも国債発行高の方が多くなるとも言われている。そして出てきたのが消費税増税。国の借金残高は2008年12月末現在でおよそ850兆円(財務省HP)。日本のGDPは500兆円強。かりに税率が10%になったとして、500兆円の過程にすべて消費税がかかるとしたとしても50兆円。気の遠くなるような話だ。政府は景気が回復したらなんて言っているけど、かけこみ需要があってそのあとガクンと落ちるのは今までの通例。それはそうだろう。かりに税率が10%になるとしたら自分の給料が10%下がるのと同じようなもの。給料が低い人ほどこの10%が響いてくる。
今の仕組みを残したままでの「経済危機対策」では潤う所は潤いを戻し、少しはましになったかなという層が少し増えるだけだろう。そのバランスが一定限度を超えて崩れなければそれで社会は安定を保つということだ。しかしそのバランスを崩して消えていった国、体制は歴史上いくつもある。
「大洪水よ、わが亡きあとに来たれ」とはマルクスの「資本論」の中の一節だそうだ。自分の生存中はとにかく稼ぎまくる。社会もそういう仕組みにする。わが亡きあとならその反動として大洪水のような危機が来ても知るよしもないというのが資本の論理ということのようだ。政府の「経済危機対策」、当面の選挙のり切り策としては効果をもたらすかもしれないがそれこそバランスを崩す時代の幕開けとなるのではないか。(2009/4/16/No.132)
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