政府は、6月の月例経済報告で、景気の基調判断を2カ月連続で上方修正し、7カ月ぶりに「悪化」の表現を削除した。(6/17/NIKKEI NET)。
悪化していないということは下げ止まったということだ。その意味するところはなんだろうと思う。
一つには総選挙を前にして「100年に1度の金融=経済危機」と言われる中で資本主義の限界説などがささやかれているが、そんなものは一部の者が騒いでいるに過ぎないということを表明しているのだと思う。資本主義は現在においても人々にそれなりの生活を保障している。今現在でも贅沢な生活ができる人々はたくさんいるし、贅沢をしなければなんとか生活できる人もたくさんいるといわけだ。
そして次には下げ止まったのだからあとは上がっていくだけだということの表明だろうと思う。それに答えてということだろうか「11日の東京株式市場は、景気の底打ちに対する期待感を背景に値上がりする銘柄が目立ち、日経平均株価は、取り引き時間中としてはおよそ8か月ぶりに、一時、1万円台を回復し」た(6/11/17:15/NHK HP) 。
「エコポイント」がもらえる薄型テレビの販売台数が、今月に入って去年の同じ時期と比べて60%を超える高い伸びを示しているのだという(6/11/6:14/NHK HP)。
エコカーを買えば補助金が出るという政策にも期待が集まっているらしい。しかし高速道路の休日1,000円といい、“お得感”のあるものだけに集中しているきらいがあるのではないか。前述の薄型テレビにしても「BCNの道越一郎シニアアナリストは『エコポイントの制度は、薄型テレビの販売には一定の効果があると思う。しかし、テレビの価格が下がっているため、電機メーカー各社は販売台数が増えても売り上げは伸びず、利益がでにくい状況に変わりがない』と」言う(NHK 前同)。やはり“お得感”なしにはなかなか購買意欲がわかないということではないのか。
それに対して“お得感”のない業界はどうなのか。新型インフルエンザの影響を受けたこともあって「5月の東海道新幹線の1日あたり平均乗客数が前年同月比15%減少」「減少率はJR発足以来最大」「乗客減は昨年11月以来、7カ月連続」「景気悪化でビジネス客の出張利用が減ったほか、新型インフルエンザの感染拡大」(6/16/NIKKEI NET)。
「4月の主要旅行会社62社の取扱額は、前年同月比14.5%減」「前年実績割れは9カ月連続」「減少率はイラク戦争や重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響などで落ち込んだ2003年6月の19.4%以来の大きさ」「景気後退を受け、国内、海外とも落ち込んだ」(6/12/NIKKEI NET)
「JTBなど旅行大手の7、8月の予約は国内、海外とも前年同月比2ケタ減」「苦戦する都市ホテルでは夏の宿泊プランの値引き合戦が始まっている」(6/12/NIKKEI NET)。
旅行関係だけを並べてみたが、これ以外にも百貨店やスーパーの売上高も低迷している。今の時代、あれもこれも消費が拡大するという時代ではないのではないか。あちらが増えればこちらが減る。こちらが増えればあちらが減るという一種の玉突き現象があるのではないか。
期待だけではなかなか思うようにはいかないものだ。日経平均株価は1万円台という面で見ればあっという間に“撤退した”。
そもそも景気の下げ止まりに“貢献”したとされる生産の下げ止まり、回復とはなんなのか。世界的な不況で物が売れないので生産を削減して在庫の一掃に努めた。そのために工場の閉鎖や一時休止、派遣・期間工の解雇等々の犠牲が出た。結果として在庫は削減された。在庫が一掃されたのでそろそろ生産を再開させようかというのが生産の下げ止まり、回復という現象ではないのか。しかしバブル当時の需要は当然ない。生産の再開は必ずしも売れるという保障つきのものではない。従って雇用も増えない。
「架空の需要」をつくり上げて売りまくったバブルの時代は終わった。今また株価が上がる、債権が上がる、原油が上がる、穀物が上がる等々のキャピタルゲイン(値上がり益)の再来がなければ実需に頼るしかない。実需となれば雇用の安定、商売の安定、老後の安心等の実感がなければ全体的な消費の活性化は見込めないだろう。実感ではなく期待でカネを使わせる、それが今の政府の手法ではないか。カネを使わせれば景気が上向くという論理で。しかしとりあえず“カネ余り族”が飛びついてみたもののその“カネ余り族”もようす見になってきた。(2009/6/21/N0.153)
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