ゼネラル・モーターズ救済でアメリカはどう変わろうとしているのか?
米ゼネラル・モーターズ(GM)が1日、負債総額1728億ドル(約16兆4000億円)を抱えて米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。(6/1/NIKKEI NET)。
今後アメリカ政府がおよそ300億ドル、日本円で2兆8000億円余りの金融支援を行い、法的整理を経て設立される新しいGMの株式のおよそ60%を保有して経営陣の一部を選定することになるのだという(6/1/17:10/NHK HP )。
結局、巨大企業だけは手厚く救済されるという結果になった。「新自由主義」をみずから望み、執拗に規制緩和を要求し、やりたい放題に利益を追求し、みずからの手におさめておきながら失敗すれば巨大だからというだけで公共目的に使われるはずの税金が公共の目的に合致するとして湯水のようにつぎ込まれる。どうにもしっくりしない話だ。
アメリカ国内でも相変わらず歓迎していない人たちが多いようだ。「最新の世論調査を見ますと、GMを公的資金で救済するのではなく、いっそのこと廃業させてしまった方がよいという厳しい意見が過半数を超えました」(06.02 テレビ東京HP)。
GM救済にはオバマ大統領の支持基盤である全米自動車労組を救済する目的があるとの批判がある。そういう面からの反対も多いようだが、GM再生のために公的資金をつぎ込んでだれが助かるのか、だれが“得をする”のかという不信感も国民の中には大きくあるということではないか。
一方でこの救済に対して真っ先に歓迎の意を表したのが「マネー資本主義」を“楽しむ”人たちだった。 ニューヨーク株式市場では1日、「市場の懸念材料がふっしょくされたとの見方や景気回復への期待から平均株価は大幅に上昇」「終値は先週末より221ドル11セント高い8721ドル44セント」(6/2/6:26/NHK HP)となった。結局4営業日連日で上昇を続けた。東京株式市場でも2日、「懸念材料が出尽くしたという見方や、景気の底打ちに対する期待感から」26円56銭高い、9704円31銭と、終値としてのことしの最高値を更新し、去年10月7日以来、およそ8か月ぶりの高値水準を記録した(6/2/16:36/NHK HP)。その後も年初来高値を更新している。いずれももうこれ以上悪くなることはない。これからは基本的には上がるだけだ。マネーがマネーを生む時代の再来の期待が広がる。そういえばいつのまにか原油価格(NY=WTI=2日)が68.55ドルまで上昇してきた。「外国為替市場で対主要通貨でのドル売りが加速したことを受け、ドル建てで取引される原油に割安感から」「世界的な景気底入れを見込んで原油相場の先高観が強かった」などの理由からだという(6/3/NIKKEINET)。この世界はどうにも懲りていない。欧米各国は景気刺激策と称して低金利政策を続けている。おそらくその恩恵が相変わらずこの方面に流れているのだろう。
そもそもGMの破綻には「マネー資本主義」が関係していると指摘されている。株価を上げ続けるためには利益を出し続ける必要がある。そのため多額の投資を必要とする省エネ、環境対策を手抜きしてきたツケが競争力低下となって現われたというわけだ。今後この面での投資は避けられないだろう。そういう意味では「マネー資本主義」の期待には答えられないはずなのだが。
今後GMは「60日から90日で裁判所の管理を離れ、経営を再建する」(GM=ゼネラル・モーターズのヘンダーソンCEO・最高経営責任者)(6/2/5:30/NHK HP)ために大規模なリストラが必要だという。現実問題として「年末までに事務系社員を22パーセント削減」する (6/2/5:30/NHK HP)。「現在46あるアメリカ国内の工場のうち13の工場を順次閉鎖」する(6/2/9:5/NHK HP)。「販売店を4割減らす方針を明らかにしてい」る(06.02 テレビ東京HP)。という具合だ。
ということは、アメリカ国内の33の工場は残る。事務系職員の78%は残る。販売店の6割も残るということだ。アメリカ経済を壊滅的打撃から救うためにはある種の人々に“痛みに耐えてもらって”とはどこかで聞いたシナリオだ。富裕層と中間層を維持できれば国の体制はなんとか維持できるということだろう。
オバマ大統領は「新生GMは再びアメリカ成功の象徴になることができる」と強調したという(06.02 テレビ東京HP)。おそらく今後のGMはトヨタ型の企業を目指すことになるだろう。技術革新、とりわけ省エネ、環境対策に関する投資は避けて通れないだろう。そのかわり社員に対する手厚い保護は削られていくだろう。トヨタは国内に絶大な市場を持つ必要はなかった。アメリカを中心とする海外の市場を目指せばよかった。だから非正規社員の導入など国内ではコストを徹底的に削って競争力をつけた。GMもそういう道を歩むことになるだろう。
しかしそれでアメリカという国はどうなる?今の金融・経済危機が起きる前の日本では輸出大企業を中心に「史上最高益」を5年くらい繰り返した。しかしコスト削減をはかって国際競争力をつけて海外で稼ぎまくる体制だから国内では「実感なき景気回復」と言われた。新生GMもコスト削減に努めて競争力に打ち勝とうとするだろう。しかし金融・経済危機から抜け出すために企業再建をはかる、その企業再建のために“痛みに耐えてもらう”人々を放出する。バブルのはじけたアメリカでそれで国内購買力が保障できるか。結局トヨタがやったように海外に活路を見出すしかなくなるだろう。具体的には中国中心のアジア諸国ということになる。しかし国内需要が冷えた欧米、日本の企業が押し寄せて中国の内需が維持できるのか。もし維持するとしたら中国もまたとてつもないバブルの時代にのめりこむしかなくなるのではないか。国際競争力を突き詰めるあまりに自国の市場を冷やしていく。かりに「新生GMは再びアメリカ成功の象徴になることができ」たとしても世界の投資マネーが湯水のように集まるアメリカの復活はないだろうと思う。(2009/6/4/No.147)
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